バスの運転士さんの一日

意外に知らないバスの世界! バス運転士の一日に密着!

神奈中バスのみなさん

公共交通機関としての重要な役割を担う各バス会社では、安全なバス運行のために、日夜さまざまな取り組みが行われています。日々、徹底して繰り返される取り組みの中にこそ、安全運行の基本があるのです。知っているようで知らない、そんなバス運転士の一日に密着しながら、安心・安全なバス運行への取り組みについてご紹介します。

今回訪れたバス会社は、国内でもトップクラスのバス保有台数を誇る神奈川中央交通株式会社。「神奈中バス」として、神奈川県内から東京都下エリアの方々にも大変なじみの深いバス会社です。今回取材に応じていただいた運転士の亀山さんは、東京・町田営業所生え抜きの運転士で、無事故を誇る勤続30年のベテランです。亀山さんの一日に密着しました。

※写真は左から、運転士の亀山さん、助役の石川さん、整備長の二見さん

■バス運転士の一日・運行前におこなうこと

(1)出勤〜アルコール検査〜運転車両の確認

出勤したら点呼簿に押印し、運転車両の確認をします

「アルコール検査」を実施

アルコール検査の帳票を出力して、運行管理者に報告します

運行管理者からカギや携帯電話等を受け取ります

ICカードを取り出します

運賃箱にセットする金庫等を携えて、運転車両へ向かいます

(2)運転車両の点検〜始業点呼

運賃箱に金庫をセットしたら、運行前の点検をします

エンジンをかけて、計器などをチェック

タイヤの空気圧等を工具で叩いて確認

エンジン周りを確認します

車両周りの電気系統も、一回りしてチェック

決められた点検が終わったら、「車両点検票」に記入します

車両点検票には細かい点検項目があります
 

記入が終わったら、始業点呼です
健康状態や運行上の注意点などの確認があります

運行管理者と一緒に、指差呼称をします

「運行時間表」が手渡されます

■バス運転士の一日・運行

(3)出 発

準備が完了したら、いよいよ出発です

安全運転で、いってきます!

■バス運転士の一日・運行後におこなうこと

(4)運行後の車内・車両点検〜乗務記録簿の記入〜終業点呼

営業所にバスを格納後、安全のために輪止めをします
 

車内に忘れ物や異常がないかをチェックし、
運行後の点検を行います

ICカードを返却します

売上を精算し、「乗務記録簿」を記入します

運行後もアルコール検査を行います
 

運行管理者との終業点呼で、その日の運行結果を報告
カギや携帯電話等を返却し、業務が終了します

神奈中バス・運転士 亀山さんインタビュー

●父も神奈中バスの運転士

長崎県・長崎バス観光のバスガイドさん
神奈中バス・運転士の亀山裕司さん
父親から二代続けて神奈中バスの運転士
秋田県・秋北バスの運転手さんとバスガイドさん、社長さん
とにかく事故を起こさないことがプロとしての責任
30年間、無事故で通したベテランらしい一言
秋田県・秋北バスの運転手さんとバスガイドさん、社長さん
連節バス「ツインライナー」に乗務する亀山さん
運転士として誇りに思うひとつが、このバスへの乗務

バスの運転士になろうと思ったのは、子どものころから車が好きで、特に大きな車に魅力を感じていました。好きなものを仕事にできるなら、それが一番いいと思いましたし、それが直接のきっかけでした。
実は、私の父も当社の運転士でしたが、小さい頃は父はいつも不在がちで、運転士はとても大変な仕事なんだろうと思っていました。そんな自分がいま、父と同じバスの運転士になったというのも、不思議な話です。

●はじめての乗務はとにかく緊張

約30年前の新人の頃は、町田営業所の路線は、今の3倍ほどあったので大変でした。元々自分は地元の出身なので、地理にはかなり詳しかったのですが、はじめて路線バスに運転士として乗務したときは、とにかく緊張しました。かなりギクシャクした感じだったと思います。

●神奈中バスの運転士研修制度

新人運転士はまず研修センターで、座学と運転実技を合わせて約2週間の研修期間があり、それから所属する各営業所に配置されます。私は、指導運転士として、まずはバスの回送時などに同乗して新人の研修にあたっています。同乗するときは、新人運転士の後ろに立って、左右のミラーが見える位置にいなければなりません。
同乗訓練は、最低でも3ヵ月くらいはかかります。はじめは路線がわからずに戸惑う新人も多いです。強制はできませんが、時間をみつけてできるだけ路線や地域に慣れ親しむように助言はしています。新人の中には、バイクで路線を走って覚えようとする熱心な者もいます。

●運転士としての心構え

運転士として気を付けてほしいことは、とにかく事故を起こさないこと。事故を起こせば特にお客さまにご迷惑をおかけするのはもちろん、自分自身も嫌な気持ちになります。これからの目標としては、指導運転士という立場上、ひとりでも多くの優秀な運転士を育てられたらと思っています。

●ステータスとしての連節バス「ツインライナー」

人の命を預かる仕事としてとらえれば、運転士という職業は「楽しい」といえる仕事ではありません。しかし、こうして30年間、無事故で運転士を務めたおかげで、町田営業所の連節バス「ツインライナー」の運行セレモニーにも出席できました。また、営業所で初の連節バス の運転士になれたことも、記憶に残るできごとになりました。

ツインライナーの乗務訓練では、班長運転士を中心に課題表をを作って訓練に取り組みました。また、最初に導入された茅ヶ崎営業所、次に導入された厚木営業所に行き、運転上の注意などアドバイスを受けました。 神奈中バスの運転士にとって、ツインライナーの運転ができることは、ひとつのステータスのようなものです。



インタビュー後記

バスの保有台数で国内トップクラスの神奈中バス。今回取材した町田営業所は規模も大きく、それに対応するための設備を備え、運転士の運行管理も徹底していました。インタビューに答えていただいた亀山さんの、「安心・安全な運行を行う」というプロとしての信念と誇りが、営業所全体を包み込んでいる印象を持ちました。
連節バスの導入セレモニーに参加できて、その運転も任されたことが一番うれしかった、と笑顔で語る亀山さんの一言には、昔日のバス好きの少年の姿と、神奈中バスの運転士としての誇りとプロ意識が重なり、とても印象的でした。
東京都内では、初の連節バスの運行を実現した「ツインライナー」。2012年の5月28日に運行が開始され、現在では平日だけでなく、土日にも運行されるようになり、人気のバスとなっています。これからも地域とバス事業の発展のために、さまざまな展開を期待したいと思います。