快適さも追求!『第1回バスドライバー安全運転コンテスト』第二部開催!
2017年2月12日。東京バス協会主催の「第1回バスドライバー安全運転コンテスト」第二部「高速路線バス、空港連絡バス、貸切バス部門」が、府中運転免許試験場で行われました。一般路線バスとは異なり、安全・安心だけでなく、さらに「バスの快適さ」が評価のポイントに加わり、さらに熱い想いを込めたコンテストとなりました。
写真は、中央が個人総合優勝の小松さん(東京空港交通)、左が同準優勝の町井さん(平成エンタープライズ)、右が同3位の田中さん(平成エンタープライズ)。
「第1回バスドライバー安全運転コンテスト」第二部の関係者・参加者の記念写真。
■より安全・安心なバス運行のためのコンテスト!いよいよ第二部開催!
●『第1回バスドライバー安全運転コンテスト』第二部
東京バス協会主催の『第1回バスドライバー安全運転コンテスト』は、2016年10月9日(日)に開催された第一部「一般路線バス部門」につづき、第二部「高速路線バス、空港連絡バス、貸切バス部門」が、2017年2月12日(日)に開催されました。
今回は、関連事業者5000名のドライバーの中から選び抜かれた精鋭25名によって、熱のこもったコンテストが繰り広げられました。
- 東京バス協会常務理事・市橋さん
●主催者インタビュー・東京バス協会常務理事・市橋さん
東京バス協会の市橋さんに、第一部に引き続き、第二部開催の目的や意義について、お話を伺いました。
●高速バスの運行に求められるもの
高速バスは、一般道と高速道の両方を走らなければならないということで『安全な速度の保ち方』がより難しくなってきます。
第一部では『Gセンサー(=ブレーキをかけたときにかかるGの負荷を測定する器具)』はありませんでしたが、それに代わるものとして『高齢者疑似体験セット』を装着したお客様に乗っていただいて、車内事故防止に対応する内容を取り入れました。
第二部では、Gセンサーを取り入れある程度の速さ、50kmくらいまで速度をあげて、いかにスムーズに、安定してバスを止められるか。乗っているお客さまの不安をかきたてるものになっていないか、ということが審査の対象となります 。
安全であることはもちろん、高速バスには求められているのは、さらなる「安心感」や「快適さ」なのでしょう。
●安全運転のプロフェッショナルに求められる姿勢
第一部とはっきり違うのは、高速道路を走るバスなので全座席シートベルト着用の義務を負っている点です。『平場を走るのだから、シートベルトはいらないんじゃないか?』というような質問をさせて、それに対して参加者がどう答えるのか。『全座席着用が義務化されていますから平場でも着けてください』というような回答をすればいいし、それができなければ減点となってしまいます。
高速バスの安全走行に関しては、東京バス協会の会員企業のドライバーの技術は、かなり高いと思います。軽井沢の事故からちょうど1年になりますが、運転技術の高いドライバーに集まってもらって、その技術を大いにアピールしてもらおうということです。
安全運転のプロフェッショナルに求められるスキルは、運転技術だけではなく、常に「安全・安心」を求めるその姿勢であることは明らかです。
■『第1回バスドライバー安全運転コンテスト』第二部の表彰式
●第二部「高速路線バス、空港連絡バス、貸切バス部門」の団体総合、個人総合、個人各コースの受賞者が決定!
「第1回バスドライバー安全運転コンテスト」の第二部「高速路線バス、空港連絡バス、貸切バス部門」の受賞者が、下記の通り決定しました。
【一般路線バス部門:団体総合】
●団体総合優勝:平成エンタープライズ(田中信一さん、町井武史さん)
●団体総合準優勝:ジェイアールバス関東(西沢祐志さん、栗田光広さん)
- 団体総合準優勝のジェイアールバス関東
- 団体総合優勝の平成エンタープライズ
【一般路線バス部門:個人コース別】
●個人基本Aコース優勝:嵯峨竹男さん(神奈中観光)
●個人基本Bコース優勝:嵯峨竹男さん(神奈中観光)
●個人技術コース優勝:加藤泰さん(桜交通)
- 技術コース優勝の加藤さん(桜交通)
- 基本Aコース・Bコース優勝の嵯峨さん(神奈中観光)
【一般路線バス部門:個人総合】
●個人総合優勝:小松浩之さん(東京空港交通)
●個人総合準優勝:町井武史さん(平成エンタープライズ)
●個人総合第三位:田中信一さん(平成エンタープライズ)
写真中央左から、町井さん(平成エンタープライズ)、小松さん(東京空港交通)、田中さん(平成エンタープライズ)
- 左から、平成エンタープライズの
田中さん、田倉社長、町井さん
●受賞者インタビュー・
・団体総合優勝・平成エンタープライズ・田倉社長
団体総合優勝・平成エンタープライズの田倉社長、町井さん、田中さんに、受賞の喜びをお伺いしました。
田倉社長
今回の出場者は、所長が選出したメンバーから、さらに副社長が選びました。
コンテストへの出場が決まってから、運転士どうしが集まって「たこつぼ」を作って練習したり、各営業所ごとに、コンテストの有無にかかわらず常に練習を行っていたということがあります。
また、2年ほど前には、茨城県の自動車安全センターで、一泊二日、二泊三日で、バスの特性(クセなど)を理解するための技能研修を実施しました。結果がよかったのは、このようなことを、常に行っていた結果であると思います。
町井さん
入社して14年ですが、結果を出せたのは「初心忘るべからず」です。コンテストの出場が決まってからは、少し強めに練習をしていました。一番難しかったのは「たこつぼ」です。前日まで練習を重ねていました。
田中さん
入社して2年ですが、他社の夜行バスの経歴も含めると6年になります。今回難しかったのは、G測定のところです。基本的に普段は安全運転でゆっくり走っているので、50キロ出して、急に止まるということもあまりありませんでしたので。
- 東京空港交通の増井社長
- 東京空港交通の小松さん
●受賞者インタビュー・東京空港交通・増井社長、小松さん
東京空港交通の増井社長、個人総合優勝・小松さんの受賞インタビューです。
増井社長
彼(小松さん)は指導員乗務員として模範を示す立場にあり、チームをまとめていく力を持っています。選ばれた理由も、彼が指導乗務員という立場だったからということです。今回のコンテストに2人出ていますが、全体の力が結集され日頃の積み重ねの結果だと思います。
安全を最優先に、最高のお客さまサービスをモットーに、日々研鑽を積み重ねるということに尽きると思いますが、デメリットが少なかったということで、我々の仕事はデメリットをいかに少なくしていくかといことが大切です。団体でも3位ということでしたので、チーム力としてもあるということはありがたいと思います。今回この表彰は重いと思っているので、それを彼はまた社内に広げてくれるんだろうと期待しています。
小松さん
通常の仕事をこなしながら、指導乗務員も務めていますが、まだ半年ほどです。その指導乗務員の中でも社歴が一番浅い方なので、大先輩に対しても意見を言わなければならないのが少し辛いところです。
定期的に指導乗務員会議を年間不定期で4回ほど開催していますが、各指導乗務員が、社員の現状の聞き取りを行い、それを会議にあげて会社に相談に乗っていただくというものです」このような日々の積み重ねが、増井社長のいう「チーム力」につながっているようです。
一番難しかったのは、切り返しだそうです。
植え込みがあるため切り返しが必要で、1回切り返しまでは減点しないという条件ですが、その1回をどこで使うのかの正解がわからない中で、ずっと悩んでいました。皆さん3回ほど下見ということでコースを見られますが、それもできなかったので、今日本番ではじめてクリアでき、時間はかかったのですが、慎重にやりました。
新入社員は訓練生として教官について2ヶ月半くらい研修を受けます。
14年前の入社当時、技術的なことや、高速路線を実車で覚えるなど、ちょうどその課程に入ったときに、「たこつぼ」の訓練がありました。その教官が素晴らしい方で、決して答えを教えてくれない、自分たちで考えないとできないから、ということでした。
「たこつぼ」は3回切り返しくらいで、当時は出られましたので、そのイメージを今回も思い出しながらやってみましたが、その教官に相談に行ったところ、あれは一辺8mの枠で、今回は12mだから、全然やり方が違う、ということでした。ほとんど距離がないので、バスが思った通り動いてくれません。今回設定として、A・Bコースは「ジェイ・バス」でしたが、「たこつぼ」は「三菱ふそう」でハンドルの切れ方がまるっきり切れないので、より難しいのです。
■バスの「快適さ」の評価も加味した、コンテストの難コースを紹介!
●基本コースA:旅客想定・安定走行部門
基本コースAは、今回、最も第二部の特徴をとらえたコースとなりました。「旅客想定・安定走行=お客様の安全・安心・快適のために、どれだけ安定した走行を追求できるのか」が大きなテーマです。ここで最初に登場するのが「Gセンサー計測」。40km加速と50km加速で、ゴール地点で停止してGセンサーの計測バーの倒れ具合から、Gの負荷の大きさを計測します。緊張感あふれる車内に、Gセンサーのバーの倒れる音が響き渡ると、参加者ならずとも、ドキリとします。
その他、スタート地点での、シートベルト装着の呼びかけなど、安全への配慮についても、チェックされます。坂道発進、S字コースは、前回と同様の試験となります。
- (B)直線コース②
速度0からスタートし、50km/hまで加速、ゴールで停止
- (A)直線コース①
速度0からスタートし、40km/hまで加速、ゴールで停止
- (D)S字コース
縁石の接触等による減点、タイム計測を実施
- (C)坂道発進
坂の途中で一旦停止後d、発進20cm以上後退で減点
- 東京空港交通・伊東運行部長(執行役員)
- マルチGセンサー
●マルチGセンサーの提供事業者・東京空港交通・伊東執行役員
今回のコンテストの基本Aコースで使用された「マルチGセンサー」について、機材提供者にお話をお伺いしました。
今回機材提供しましたマルチGセンサーは、もともとトラック等の研修所で使われていたものを、社内で改良したものです。倒れるのが一方向だったのを、前後左右方向に倒れるようにし、あわせて複数のG値に対応できるよう改良しました。平成21年の中央技術委員会全国大会でも構造や寸法早見表など入れ発表させていただきました。
最近はドラレコなどでG値の解析はできますが、今回のようなコンテストで解析装置などを入れると大変なことになり、なんといっても手軽に使えて、急制動、急加速、急ハンドルなどの操作がリアルタイムで反映され、すぐにパタンと倒れるので視覚的にもわかりやすいかと思います。実は、ドラレコと比べても、意外とその数値は近いんです。こんなかたちでお役に立つとは思いませんでした。
●基本コースB:基本運転部門
基本コースBは、基本運転部門といっても、結果的には難易度の高いコースとなりました。特に、参加者がはまったのが車長ギリギリの中での「方向転換」。縁石への接触2回以上は減点という厳しさで、慎重な運転を余儀なくされて、かなり時間がとられたようです。その他、「隘路」や「縦列駐車」など、日常の運行業務を想定した試験競技もありました。
- (B)方向転換
右後退左前進・左後退右前進各1回、切り返し1回、接触減点
- (A)隘路(枠内前進駐車)
3×14mの枠内に右、左旋回で駐車。ラインはみ出し減点
- (C)縦列駐車
14m×3.2mの枠内に縦列駐車、タイム計測を実施
●技術コース:難易度高のパイロンスラローム、たこつぼ!
技術コースは、難易度の高いパイロンスラローム、たこつぼ切返しを実施します。プロの運転士にとっても、かなりの難関ですが、今回はさらに車体の長さのために、思ったように動けない、ということが多く見られました。
- (B)狭隘箇所方向転換(たこつぼ切返し)
切返し制限なし、7分経過で打ち切り、タイム計測を実施
- (A)パイロンスラローム
5分経過で打ち切り、接触等減点、タイム計測を実施
編集後記
待ちに待った第二部の開催。こちらでも、安全・安心のために熱く競い合う、皆さんの力強い姿がみられました。今回も「安全」という最重要キーワードはもちろん、「安心感」や「快適さ」など、単なる「移動手段」としての乗り物ではなく、私たちの暮らしに息づく交通機関としてバスに求められるキーワードを、強く感じたコンテストでした。見学で同乗させていただいた審査中のバスでは、Gセンサーがパタパタと倒れるたびに、静まり返った車内に、一瞬はりつめたような緊張感が走り、コンテストの参加者と一緒になってドキドキしました。東京バス協会常務の市橋さんのインタビューにもありましたが、このコンテストの参加者の皆さんは、優れた運転技術を持ち合わせた方々の代表者です。これからも、この優れた力を、ぜひ社会のために活かしていただければと思います。