先進の技術や情報をみんなで共有する『第63回中央技術委員会全国大会』
2014年11月27日(木)、東京・大手町のサンケイプラザで、日本バス協会主催による『第63回中央技術委員会全国大会』が開催されました。大会は、バスの技術全般の向上と活性化を図ることを目的とし、事故防止、整備技術の向上、経費の節約等に関する報告を行うこととなっています。今大会には全国からおよそ200人の技術担当者等が出席し、「発明考案功労者」の表彰と受賞作品の発表、さまざまなテーマによる技術業務報告、特別講演などが行われ、また夕方からは懇親会が開催され、たいへんなにぎわいを見せました。
全国大会の様子と、併設会場の商品展示会における先進の技術事例を、いくつかピックアップしてご紹介します。
■『第63回中央技術委員会全国大会』について
- 銅賞を受賞した東急トランセ
- 銅賞を受賞した名古屋市交通局
- 銅賞を受賞した名鉄自動車整備
●参加者から伝わる「安全で快適なバス事業」への想い
大手町のサンケイプラザ4階ホールで、昼食休憩を挟んで10時から17時まで、『第63回中央技術委員会全国大会』が開催されました。前方の大きなスクリーンを利用して行われた画期的な内容の発表の数々に、参加者は集中して聞き入りながら、熱心にメモをとる姿も多く見られました。
●「発明考案功労者」の表彰は銅賞が4件、努力賞が4件
「発明考案功労者」の表彰では、今回は「金賞」「銀賞」に該当するものはありませんでした。
・銅賞『DPF等フィルター洗浄機』
東急トランセ 井上治規さん
・銅賞『電装故障支援機器の製作』
名古屋市交通局 山田二三男さん・高阪竜也さん
・銅賞『ホイールシリンダ(ウエッジ)分解組立作業治具』
名鉄自動車整備 池田賢正さん・児野勇さん
・銅賞『セルモーターブラシホルダー組付け治具』
西鉄エム・テック 中原良さん
・努力賞『EGRクーラー清掃用治具』
東京都交通局 平澤拓雄さん
・努力賞『「フリーハンド」(ウインカーレバー修理治具{日野車用})』
東京都交通局 山崎健一さん・石川雅之さん・炭田昭彦さん・
佐々木章宏さん
・努力賞『カーボン落としなら「ピカピカ君」』
横浜市交通局 吉尾佳幸さん・桑本洸太さん
・努力賞『スライドパーティション(客席間仕切)の設置』
西日本鉄道 安丸諭さん
- さまざまなテーマの技術業務報告も行われました。
写真は「運転従事者における脳MRI健診の意義」の発表風景
- 銅賞を受賞した西鉄エム・テック
壇上で盛大な拍手を受ける、銅賞・努力賞の受賞者の皆さん
■『第63回中央技術委員会全国大会』商品展示会について
●43のブースによる出展で、バスの最新技術を紹介
サンケイプラザ3階では、全国大会と併せて商品展示会が開催され、多くの出展会社によるシステムやバス用品・部品などの展示が行われました。その展示のいくつかをピックアップしてご紹介します。
●商品展示会に出展された製品
システム、装置、装備品などの名前をクリックすると、出展企業名と関連展示品がご覧いただけます。
■『第63回中央技術委員会全国大会』商品展示会ピックアップ
- レゾナント・システムズの壱谷祐介さんと
緊急警報装置
●株式会社レゾナント・システムズ
交通機器営業課・主任の壱谷祐介さんにお話をうかがいました。
【主要展示品】
・新型液晶表示器・新型マイク・新型緊急警報装置
・「運行ナビ」「遅早発防止」を含む運行支援システム
・タッチパネル型デジタルタコグラフ
・デジタルタコグラフ一体型ドライブレコーダー
【インタビュー】レゾナント・システムズの壱谷祐介さん
●無線LANやクラウド化で、データ管理がさらに進化
新型の緊急警報装置は、ラジオの電波で緊急警報放送を受信した場合に、液晶モニターに表示しながら車内放送で知らせることができます。
運行支援システムは、わかりにくい交差点や見通しの悪い交差点、停留所などの指定された場所で、ドライバーにモニター画面と音で注意を喚起。これによって、経路の間違いや停留所の通過などを防ぐことができます。遅早発防止機能では、バスのダイヤデータを連動させることで、モニター上にダイヤとの差を表示し、定時の運行をサポートします。GPSとの連動で、時刻の自動補正を行ったり、各停留所の案内放送を自動で行うこともできます。
「エコ・de・クラウド」は、バスの車載器で記録した運行データを、バス車庫内の無線LAN経由でインターネット回線を通じ、データセンター内のクラウドサーバに蓄積するというもの。運転日報などの帳票も簡単に作成でき、各車庫のデータを一括管理することができるんです。
- バスの運行データから、運転日報の作成も簡単。
安全運転や経済運転について評価することができます
- 運行ナビ機能や遅早発防止機能の付いた
運行支援システム
- ジャパン・トゥエンティワンの鈴木浩明さん(左)と
テレコムの取口慎吾さん(右)
●ジャパン・トゥエンティワン株式会社
アイモバイル事業部ディレクターの鈴木浩明さんにお話をうかがいました。
【主要展示品】
・衝突防止警報補助システム「モービルアイ」
【インタビュー】ジャパン・トゥエンティワンの鈴木浩明さんと
テレコムの取口慎吾さん
●約2.7秒先の危険を予測して警告するシステム
現在保有されているバスに後付けすることのできる、衝突防止警報補助システムです。すでに日本では3万台の実績があり、高速バスや貸切バスでも多数ご採用いただいています。レーダー方式ではなく、フロントガラスに単眼のカメラを設置するだけのカメラ方式で、必要十分な性能を確保。速度に関係なく、追突・駐車車両衝突事故の2.7秒前に警報を発して予告しますから、バスの事故防止対策にはとても有効な装置となります。
前方車両衝突警報だけではなく、歩行者衝突警報や車線逸脱警報などの5つの機能を備え、すべて異なる警報音でドライバーに伝えます。いわゆる「ヒヤリ・ハット」と呼ばれる運転中のうっかりミスに対応するこのシステムで、交通事故がもっと減らせるように願っています。
- バス運転中のさまざまな「想定外の出来事」を
検知することができます
- 昼間の歩行者や自転車に乗った人を識別し、
2秒以内に衝突すると判断した場合には警告します
- コントローラについて解説するJUKIの松山繁博さん
- スリープバスター「ドライブリズムマスター」の
科学的なしくみ
●JUKI株式会社
事業開発部・営業グループ・プロジェクトリーダーの松山繁博さんにお話をうかがいました。
【主要展示品】
・運転中の疲労度測定システム「スリープバスター」
【インタビュー】JUKIの松山繁博さん
●運転中の疲労度を測定し、体調を管理するシステム
当社のスリープバスターの「ドライブリズムマスター」は、ドライバーの体調管理にたいへん効果的です。ドライバーの心臓と大動脈の活動から得られる音や振動の情報から、体調の変化を捉えて、運転に支障が出る可能性を通知することができます。心拍の間隔は、実は一定ではないんです。そうした情報をキャッチすることで、前は見ているけれど眠気の兆候があることを把握できます。ですから居眠り状態に入ってしまう前に、15種類の画像と警告音で視聴覚を刺激し、覚醒した状態へと誘導することができます。
製品化に対しては、「国土交通大臣賞」と「文部科学大臣賞」の2つの賞をいただきました。製品化後、実証実験を踏まえて、国土交通省の補助金対象機種に選定されています。
- メイエレックの浅野勝己さんと大型表示器
●株式会社メイエレック
技術開発部・システム課・主任の浅野勝己さんにお話をうかがいました。
【主要展示品】
・点呼支援システム
・観光バス業向けシステム「楽々道中」
【インタビュー】メイエレックの浅野勝己さん
●スムーズな流れを実現した先進の点呼システム
ドライバーの点呼を確実に行うための、点呼支援システムを開発しています。例えば出勤時には、指を静脈認証装置に当てて本人確認を行い、アルコールチェッカーへ息を吹きかけながら写真撮影を行ってデータを保存。さらに免許証をリーダーにセットするという一連の作業をシステム化しています。遅刻や未点呼は大型表示器とパトライトで警告しますから、より厳正に管理しながら、作業の効率化もはかることができます。
また、観光バス業向けパソコンシステムの「楽々道中」は、予約状況や配車、運行、未収状況の確認から統計資料の作成までをトータルに行うことができます。
- アルコールチェックの様子
- 例えば始業においては、静脈認証からアルコールチェック
免許証確認までの一連の流れをシステム化
- 矢崎エナジーシステムの中尾照人さん
- デジタルタコグラフ一体型ドライブレコーダー
YAZAC-eye3T のカメラから見た映像
●矢崎エナジーシステム株式会社
計装事業部・企画部の中尾照人さんにお話をうかがいました。
【主要展示品】
・デジタルタコグラフ一体型ドライブレコーダー YAZAC-eye3 LDW
・ネットワーク型デジタルタコグラフ DTG5
【インタビュー】矢崎エナジーシステムの中尾照人さん
●「予防安全」を支援する進化したドライブレコーダー
「レーン・ディパーチャー・ウォーニング」という機能を搭載し、カメラを利用して車線を自動的に検知するドライブレコーダーです。高速道路などの疲労運転によって、車線をまたがってしまうと警告音が鳴ります。もちろん、ウインカーを出して車線を変更する時には、警告音は出ません。警告音の音声は自由に変えられますから、より効果的なものにすることができます。
本体はコンパクトで縦にも取り付けられますから、邪魔にならないドライバーの足元などにも設置できます。長距離バスなどの疲労運転のリスクを抑えて、予防安全性を高めることができますね。
取材後記
日本バス協会では、車両の安全性能や環境性能、整備面の向上、サービス改善、保守費の低減など、車両・技術関係全般にわたる問題を取り上げ、中央技術委員会や各地区の技術委員会、各バス事業者における研究・検討を支援しています。今年の中央技術委員会全国大会でも、多くの重要なテーマにおける最新の情報を、広く共有することができました。また、日々一生懸命に取り組んでいる技術者の技とアイデアが評価されることで、少しでもその努力に応えることができたかもしれません。さらに安全で快適なバス事業のために、こうしたイベントを大切にし、継続して行くことがますます重要となるでしょう。